法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

中高生のための憲法教室

 

第5回<攻められたらどうするの?>


 憲法は、前文一項と九条によって戦争を禁止し、軍隊による「国際貢献」も禁止しました。こうして国家に歯止めをかけておいて、では何もしないのかというと、そうではありません。世界中の国民が恐怖や貧困を脱し、平和の中に生きることができるように積極的な貢献をすることを前文二項では求めています。

 この平和活動はリスク(危険)を伴うものです。しかし、一定のリスクを背負いながらも非暴力によって、平和づくりの活動を積極的にしていこうとしたのです。これはある意味では、人類の壮大な実験のようなものです。誰もやったことのないことに、日本は挑戦しているわけです。だからこそ国際社会において「名誉ある地位を占める」ことができるのです。

 ただ、このような話をすると、「攻められたらどうするの?」という質問を受けることがあります。今回は危機管理という観点からこの間題について考えてみましょう。三点ほどヒントを出しますから皆さんも一緒に考えてみて下さい。

 一つめは、「本当に攻めてくる国があるのか」ということです。

 残念ながら現在では、まだどこの国も国際紛争に巻き込まれる危険性はあります。ですが、そのためにどのような対策 を立てるかは、そのことが起こる蓋然性(実際に起こる確率)によって違います。

 たとえば車を運転すれば、事故が起こる可能性はあります。でも「車をなくせ」という人はあまりいません。もっと別の方法で事故を減らす努力をします。どのような不幸も起こる可能性は否定できません。ですが、その蓋然性がどのくらいあるかによって、とるべき合理的な方法が決まるのです。

 今の世界の状況で、現実に勝つ見込みをもって日本を改めてくる国があるのでしょうか。そのことを冷静に考えてみる必要があります。危機管理は、問題の起こる原因を正確に分析することから始まります。勝手な思い込みから、うろたえて下手な行動をとることは、かえって危機管理にとってマイナスとなります。

 二つめは、「軍隊を持つことが、日本を攻めようとする国に対する抑止力になるのか」という点です。

 「抑止力」とは簡単にいえば、「もし日本を攻めてみろ、ひどい目にあうぞ」という威しです。「威せば相手はあきらめるだろう」という楽観的な憶測に基づいています。ですが、相手がそんな威しに乗らない国やテロリストだったらどうでしょうか。こちらが軍事力を強化すれば、より殺傷力の高い暴力的な手段を準備するだけでしょう。

 そして、アメリカとの軍事同盟を強化することは、「私たちが何もしなくても、攻められる危険が増える」ということを意味します。アメリカの敵がすべて日本の敵になるのです。

 たとえばアメリカによるアフガニスタンへの攻撃や、イラク戦争を、日本が支援する前と後とで、どちらがより危険な状態になったかを考えてみてください。今は安心して新幹線にも乗れません。あえてそのように危険を増す選択をする必要がどこにあるのでしょうか。危機管理の基本はリスクを回避することであるはずです。

 また日本が再軍備することに対して、アジアの国々はどう思うでしょうか。今の憲法の下でさえ自衛隊をコントロールできない日本人を、信頼してくれるでしょうか。それこそ「日本に攻められたら大変だ」とさらに軍備を増強していく可能性があります。それに対抗して日本もどんどん軍備を拡大することになります。それでいいのでしょうか。攻められたくないのなら、その口実を誰にも与えないことが必要です。

 三つめは、「仮に攻められてしまったときに、軍事力は意味を持つのか」という点です。

 こうした場合に軍事力によって反撃しても、日本人の被害がさらに拡大するだけです。戦争になれば相手の国の民間人を殺傷してしまうことは避けられません。お互いの憎しみを増加させ、さらにテロを招くことになり、結局は日本人の生命と財産により多くの被害がでることになります。

 戦争以外の方法で問題を解決する道を必死で求めなければ、国民がより不幸になるだけです。ましてや攻められる前に、その可能性があるからといって相手を攻撃したら、相手の憎しみは強固なものになります。パレスチナやイラクでの報復攻撃を見ても、軍事力による攻撃が有効とはとても思えません。二次被害を避けることも危機管理の目的です。

 これまで日本政府は、「戦力を持って戦争をすることはできないが、自衛権があるのだから自衛のための必要最小限度の実力を持つことはできる。戦力によらない防衛が可能なのだ」という考え方をとってきました。

 何が「戦力」なのかは議論の余地のあるところですが、このように「戦力によらなくても外交力によって自衛はできる」という考え方を推し進め、より外交交渉力を高めるほうが、日本の国民を守ることにつながるのです。
<<(4)へ

[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]