法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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第4回<「戦争放棄」の理由>


 イラクで人質になった五人の方に対して、「自業自得だ」とか「自己責任」という批判が行われました。他方で小泉首相は、憲法の前文を引用して、「イラクに派遣されている自衛隊は憲法の国際協調主義に合致している」と言います。人質になった方たちは悪いことをし、自衛隊はよいことをしているのでしょうか。

 ここで、「憲法は国家権力を制限して国民の人権を守るためのものだ」ということをもう一度確認しておきましょう。そして、歯止めをかけるべき国家の行為のうち、もっとも重要なものが戦争です。
 憲法は前文一項で「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意して憲法を確定した」といっています。

 つまり国に戦争を起こさせないように歯止めをかけることが、憲法制定の目的のひとつだったのです。この戦争放棄は、有名な九条によってより明確になります。

第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、.陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。
国の交戦権は、これを認めない。

 このように憲法は九条一項で戦争や武力を放棄し、二項で戦力を持たないと規定することによって、国家に対して一切の戦争をしてはならない、戦力つまり軍隊を持ってはならないと強力な歯止めをかけたのです。

 普通の国は自分の国を守る軍隊を持っています。なぜ日本は軍隊をもってはいけないということにしたのでしょうか。それは軍隊をもつことは役に立たないし、かえって有害だと考えたからです。

 まず日本を守るために軍隊は役に立つのでしょうか。日本は第二次世界大戦のときに世界有数の軍隊を持っていました。でも結局は戦争に負け、日本全国で多くの死傷者を出しました。同時に二〇〇〇万人ものアジアの人びとに対して加害者にもなりました。戦争では最前線の兵士や子どもや女性など弱い立場の人から犠牲になっていきます。結局、日本は軍隊によって国民の生命と財産を守ることはできませんでした。

 戦争に負けた日本の国民は考えました。国際紛争が起こったときにそれを軍事力で解決しようとしてもダメだ。暴力に暴力で対抗すると、結局は暴力の連鎖によってより多くの国民が犠牲になってしまう。だからたとえ「自衛のため」であっても軍事力という暴力は一切使わないと決めたのです。

 多くの戦争は「自衛のため」という名目で行われてきました。また、核兵器や生物化学兵器さらにはテロから、軍事力によって国民を守ることは現実問題として不可能です。軍隊をもっていることで、攻められる口実を作ってしまうこともあります。軍隊は国民を守るためには役立たないのです。

 「国際貢献」はどうでしょうか。憲法は、「人道」や「自由」のための戦争も行わないと決めました。「国際貢献」という美名の下で、軍事力を行使して民問人を殺害することは許されません。たとえ「人道支援」目的であっても軍隊である以上、そこでは虐殺や虐待が行われ、憎しみは増します。

 では、どうやって国を守ろうとしているのか。憲法は「攻められない国」を創ることにしました。戦争や内戦の原因となるような飢餓、貧困、人権侵害、差別、環境破壊などをなくすために、国際社会において積極的な役割を果たすことによって、それらの国から信頼され、攻められない国を創りあげて、日本の安全と平和を達成しようとしました。

 このことは同時に世界の平和を創りあげる努力であり、最大の国際貢献にもなります。けっして「日本だけが平和であればよい」とする「一国平和主義」ではありません。むしろそれとは正反対の考え方です。このことを憲法前文は、「日本国民は、……平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と謳っているのです。

 さまざまな困難をかかえた地域に積極的に出かけていって、世界の現実を伝えたり、子どもを助けたり、井戸を掘ったり、病院や工場を作ったりする地道な活動を続けることこそが、憲法の予定した国際貢献です。自衛隊という武装集団を送り込むことではありません。

 今回の事件で人質になった方たちはまさにこの憲法の理念を実現していたのです。こうした活動で世界の平和づくりに貢献ことによって、日本は国際社会において「名誉ある地位を占める」ことができるのです。

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