法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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第16回<あなたも私も納税者>


先日、長者番付が発表されました。
「高額納税者公示制度」といって、多くの税金を納めた人に納税額で順位をつけて国が発表するのです。スポーツ選手や芸能人だけでなくサラリrマンであろうと会社の社長であろうと、年収の多い人はみんな発表されてしまいます。本人の承諾なしに国が氏名や住所などの個人情報を公表してしまうのですから、プライバシー保護の観点からは問題のある制度で、見直しも検討されているようです。
ただ実際には、多くのサラリーマンは自分がいったいいくら税金を納めているのかあまり実感していないかもしれません。会社から給料をもらうときに、あらかじめ税金はさし引かれて渡される「源泉徴収制度」があるからです。
この制度は日本に昔からあったわけではありません。膨大な戦費を安定的に調達するための制度として、一九四〇年に導入されたものです。戦争が終わって廃止すればいいものを、税金を取る手段としては効率的なので国はそのまま残しているわけです。この制度があると、自分は納税者であり、この国のお金の使い方について意見を言える立場にある主権者なんだということを、どうしても忘れてしまいがちです。
これまで何度もお話ししてきたように、憲法は、国民の人権を保障するために国家権力を制限する道具です。ですから、憲法には人権に関する規定が多く、義務規定はたった三つしかありません。「教育を受けさせる義務」(二六条二項)、「勤労の義務」(二七条一項)、そして「納税の義務」(三〇条)です。
「教育を受げさせる義務」は文字通り、「子どもが教育を受けることができるように親は責任を果たせ」という意味であり、子ども自身の義務ではありません。
また、「勤労の義務」は、「働く能力も機会もあるのに働かないでおいて国に生活保護を要求することはできません」という程度の意味です。「強制的に働かされる」というような意味ではありません。
結局、義務らしい義務は「納税の義務」だげです。ではなぜ、国民の権利規定である憲法に、こうした納税の義務が置かれたのでしょうか。
そもそも憲法は何のためにあるのかをもう一度考えてみましょう。私たちは生まれながらに人権を持っています。そしてその人権をお互いに守るために政府をつくりました。そのときどきの政府つまり国は、私たちが自分たちのためにつくった制度なのです。ですから、自分たちでつくったものを動かすための費用を、自分たちで負担するのは当然のことです。これが「納税の義務」です。
それは日本が国民主権の国であることとも関連します。国民が主人公なのだから、国民が自分たちでお金を出し合ってこの国の運営を専門家にまかせ、そのお金の使い方についても、しっかりと目を光らせていくことが必要なのです。「予算」という税金の使い道の計画をしっかりとチェックし、さらには実際にどのように使われて、どれだけの効果があったのかを後でしっかりと監視していかなけれぱなりません。
みなさんは、自分で直接税金を納めたことがないから関係ないと思っていませんか。みなさんもちゃんと税金は納めているのですよ。みなさんが毎日買い物したりするときには消費税という税金がかかっています。そうした税金が何に使われているかをぜひ意識してください。
国民の税金で、皇族の結婚式が行われます。
国民の税金で、災害救援の費用も支払われます。
国民の税金で、犯罪者の更正プログラムも運用されます。
国民の税金で、公務員がおこなった不始末の損害賠償が支払われます。
国民の税金で、日本に駐留する米軍の生活費がまかなわれます。
国民の税金で、米軍の爆撃機が燃料を補給され、アフガニスタンやイラクを攻撃します。
自分の払った税金が戦争に使われていると考えると、私は黙っていられなくなります。何にいくらかかっているのか、はっきりしてほしくなります。ですが防衛庁は、自衛隊のイラク駐留でどれほどの税金を戦争請負会社に支払っているのか、秘密にしています。
納税者として税金の使い道を監視するということは、主権者としてこの国の政治を監視することであり、まさに国民主権そのものです。私たちは自分たちの支払った税金の使い道についてしっかりと意識し、意見を述べないといけないのです。私たちの支払った税金が、世界の人びとを幸せにするためで使われるのならぱよいのですが、一部の人のふところを肥やすような使われ方や、ましてや人を傷つけるために使われることは断じて許せません。
みなさんも納税者であることをしっかりと自覚して生活してください。それが憲法を考えることにもつながるのです。
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