法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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第15回 <憲法は押しつけられたか?>


みなさんは「押しつけ憲法」という言葉を聞いたことがありますか。
いまの憲法は戦争で負けたときに外国から押しつけられた憲法だから、自分たちでつくった憲法とはいえない、だから自分たちの手で新たな憲法をつくらなければならないという主張です。
いまの日本国憲法は本当に外国から押しつけられたものなのでしょうか。
そもそも押しつけというのは、その人の意思に反して強制することをいいます。では、日本の国民の意思に反して強制された憲法なのでしょうか。そんなことはありません。たしかにマッカーサー案をもとに憲法草案はできました。しかし、その後、普通選挙で選ばれた国民の代表者がしっかりと審議し、みんなが賛成してできたものです。
しかも、審議の過程では、前文に国民主権が明記され、二五条に生存権の規定が設けられ、国家賠償請求の条文(一七条)や刑事補償の条文(四〇条)なども追加されました。国民はもちろん反対することもできましたが、多くの国民はこの憲法を支持しました。
ただ、「押しつけられた」と感じた人たちもいたようです。明治憲法のように、天皇を中心とした憲法のままにしておきたいと考えていた政治家たちです。その当時の権力者の一部は、自分たちが考えている憲法と違うものができたので、これではイヤだと思い、押しつけられたと感じたのです。
ですが、そもそも憲法とは何だったでしょうか。憲法とは、国家権力を制限し、国民の人権を守るものです。つまり、権力者に歯止めをかけるためのものですから、権力者が押しつけられたと感じるのはむしろ当然のことなのです。それに対して、国民は権力者に憲法を押しつける側にいるのですから、自分たちが押しつけられたと感じる必要はまったくありません。
もちろん、日本人だけでつくることができたらもっとよかったと思う人もいるかもしれません。ですが、どこの国の憲法もさまざまな混乱のなかから生まれるので、いろいろな問題をかかえているものです。どのように生まれたかよりも、現在の国民がその憲法にどのような意味を与えているのかのほうがよほど重要なことなのです。
「国民が改憲論議にあまり熱心ではない」と嘆く政治家がいるそうです。それはそうです。国民は現在の憲法で、とくに不都合は何も感じていないのですから。政治家の人たちが戦争のできる国にしたいと考え、そのためには自分たちに課せられた歯止めをはずさなければならないので、改憲が必要だと主張しているのです。
どうして偉くなると大人は憲法を変えたくなるのでしょうか。多くの政治家や財界の偉い人たちは、改憲して、軍隊をもつ「普通の国」にしたいそうです。それに対して、中小企業の社長さん、労働者の人たち、教育現場の先生たち、主婦のみなさんなどには、改憲に反対の人が多いようです。政治家や財界人には、武器を輸出して大もうけをしたいと考える人が多いのでしょうか。何か強いものに憧れるのでしょうか。
それに対して中小企業の社長さんは、平和でなければ仕事がないことをよく知っています。武器輸出でもうかる工場などごくわずかです。また、労働者の人たちも、軍事費に国の税金が使われて、福祉や教育に割り当てられる予算が大きく減ってしまい、自分たちの生活がもっと苦しくなることがわかっているので、まさに自分たちの生活に影響する問題だと感じて反対するわけです。
学校の先生たちは、日の丸、君が代を国旗、国歌と決める法律ができたときに、国は「絶対に強制はしません」といっていたのに、いま卒業式や入学式でおそろしいほどの強制がおこなわれているので、国のいうことはまったく信用できないとよくわかっています。「軍隊を作っても侵略戦争には加担しない」などといっていても、そんな政治家の言葉などまったく信用できないことを身をもって知っているのです。
弁護士などの法律家も、改憲に反対する人たちが多いようです。それは、憲法の中身をしっかりと理解すると、とてもよくできていて、とくにいま、直す必要などないとわかっている人が多いからです。また、改憲され軍隊をもつ国になると、安全保障のためだからといっていろいろな形で私たちの自由や権利が制限される危険性とその怖さを、職業柄よく知っているからなのです。
私たちは、勇ましいことに憧れる気持ちや、なんとなく押しつけられたからイヤだというようなあいまいな気持ちで、いまの憲法を変えてしまってはいけないと思います。
ここで憲法を変えてしまうと、みなさんや、もっと若い次の世代の人たちの生活がとても息苦しくなってしまいます。いまを生きる人間には、次の世代の人たちに対して、少なくともいまの自由な社会を守る責任があります。憲法を知ってしまった人間には責任があります。ぜひ、多くの人たちに憲法を伝えてください。
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