法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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第11回 <「普通の国」と「日本の独自性」>


今年は「憲法改正」が大きな国民的な議論になると思われます。そこで憲法改正を考えるときの視点について、もう一度整理しておきましょう。

現在の日本国憲法の特長をしっかりとふまえた上で、改憲論議に積極的に参加していくことが必要です。

日本国憲法は西欧の近代憲法と同じところと違うところを持っています。

まず、同じところです。それは、憲法は「個人の尊重」(憲法一三条)を達成するために国家権力に歯止めをかけるための道具である、と考える点です。

アメリカもイギリスもフランスもドイツも、近代の先進国の憲法の共通点はここにあります。つまり、「一人ひとりを個人として尊重し、その個人の人権を保障するために、国家権力を制限することを目的とするものが憲法である」という理解は、近代文明国家において共通の到達点なのです。

こうした考え方を「立憲主義」と言いますが、この「個人の尊重」と「立憲主義」の思想こそ、血と涙を流して獲得した人類の英知といえます。日本国憲法は人類が生み出した貴重な財産を引き継いでいるのです。

次に日本国憲法が持っている、西欧近代憲法とは違う独自性がどこにあるのか見てみましょう。それは「平和的生存権」を保障し(前文三項)、「積極的非暴力平和主義」(前文、九条)を採用している点にあります。

そもそも国家の役割は国民の生命と財産を守ることにありますが、日本国憲法は、軍事力という暴力ではなく、外交や非軍事の国際貢献など、理性にもとづく非暴力の手段によって国民を守ることにしました。

それは、軍事力によって国民の生命や財産を守ることは、現実問題として不可能であると考えたからです。また、「人道」や「自由」といった美名のもとで他国へ軍事的介入することは、憎しみや暴力の連鎖(れんさ)を招くだけであり、けっして真の国際貢献にはならないからです。

西欧諸国と共通の「個人の尊重」という価値観を、日本国憲法ではさらに発展させて、「平和的生存権」という人権を保障しています。一人ひとりを個人として尊重するからには、その一人ひとりの命が大切に守られ、恐怖と欠乏に怯える(おびえる)ことなく平和に生きていくことができなければなりません。そのことを「権利」として、はっきりと保障したのです。

平和が国家の単なる「政策」ではなく、「人権」として保障されることになると、国家はこの人権を保障する義務を負うことになります。外交政策も国防政策も、すべてこの平和的生存権という人権に奉仕するものでなければなりません。国民を恐怖に陥れ(おとしいれ)、命を脅かすような「軍事力による防衛」ではなく、他国から信頼され、攻められない国をつくることで国民を守ることが国家の義務となるのです。

もちろん、日本だけが平和であればよいとする「一国平和主義」ではありませんから、世界の紛争地域から恐怖と欠乏を根絶するために、非暴力の手段によって積極的な活動をすることも求められています。

こうした前文と九条にもとづく「平和的生存権」と「積極的非暴力平和主義」は、これからの世界の進むべき方向を明らかにしたものであり、日本国憲法の先進性を示すものといえます。戦争によって多くの命を失った代償として獲得した、まさに日本国憲法独自の宝であり、過去の歴史から学び取った日本の英知なのです。

私は、憲法を改正するのであれば、人類の英知としての「個人の尊重」と「立憲主義」をさらに進め、かつ、日本の英知としての「積極的非暴力平和主義」をより発展させるものであればよいと考えています。

仮に「個人の尊重」や「立憲主義」という価値を後退させ、個人よりも「公」や「国家」を尊重するような改憲であれば、それは改正の名に値しません。近代文明国家としての日本の歩みを近代以前に戻してしまうことになります。

また、平和主義において日本の独自性を捨て去るような改憲であれば、人類共通の願いである真の国際平和を実現する方向性を失い、日本が国際社会において「名誉ある地位」を占めるチャンスを逃すことになります。なによりも戦争で失われた命が無駄になってしまいます。このような改憲は許すことはできません。

改憲論議をする際には、どの点で「普通の国」となろうとし、どのような点で独自性を発揮しようとしているのかをしっかりと見きわめないといけません。立憲主義を捨て去ることによって独自性を発揮し、軍事力の点において「普通の国」になろうとするのでは、そのめざすべき方向性がまったく逆であることをしっかりと理解しておいてください。

人類の英知を正しく引き継ぎ、それを次の世代にさらに発展させてつなげていくことが、今を生きる私たちの責任なのです。

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