法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です
  憲法の希(ねが)いと祭りに込められた願いは繋がっている 2018年8月13日  
  金子満里さん(民族歌舞団 荒馬座)  
 

 荒馬座は1966年東京都板橋区に創立し、今年52周年になります。「首都圏に民族文化の花を咲かせよう」をスローガンに掲げ、日本の祭りの中で育まれてきた太鼓や踊りを舞台上演にしている専門の劇団です。日頃は小中高等学校、保育園公演を中心に、各種催し、アトラクションなど、子どもからお年寄りのいる老人施設まで幅広く活動をしています。

 その昔芸能は地域の中で生まれ、地域の大事な交流と社会教育の大切な場所でした。昔の働く人々は、厳しい自然に立ち向かい、時に圧政に耐え、困難を乗り越え生き続けるために祭りをおこなってきました。日本の芸能や祭りには、人間が生きていく上での協同の喜びや知恵が込められ、その時代時代のみんなの願いが託され継承されてきました。
 東日本大震災以降、日本全国各地で地震や豪雨など自然災害が頻発していたり、急激な都市化や効率優先の社会構造、SNSの発達によって人と人との向き合い方や働き方、人と自然の有り様が改めて問われているような気がします。このような社会状況の中で体も心も荒れ果てている現代の人々が求めているのは、昔から脈々と育まれてきた芸能にある「癒し」や「安らぎ」「自然とのつながり」「明日を生き抜くパワー」なのではないでしょうか。現代に暮らす人々の暮らしに民族芸能を通して潤いと希望をもたらすことが、働く人々の立場に立った民族芸術を理念に掲げる荒馬座の使命であると思っています。だからこそ自分たちも含めて働く人々が人間らしく生きる権利を守り、これからの日本を創る子どもたちに戦争のない平和な社会を手渡すことは、抜き差しならない課題でもあります。しかし、今の日本の国策は働く人々が安心して暮らし、働く人々の立場に立った社会とは到底言えず、どれも異議を唱えざるを得ません。
科学が発達していなかった昔、人々は芸能にさまざまな願いを込めて祭りをおこなってきました。昔の人々が祭りに込めた願いと憲法を結んでみると共通した思いがあぶり出されます。

 「天下太平」…世の中が穏やかに治まり平和であること。
 平和の下でこそ芸術文化は豊かに育まれます。平和な世を願って人々は太鼓や踊り、祭りをしてきました。憲法九条が生かされれば、必ず先人たちも願ってきた天下太平の世は保証されます。
 「家内安全」…家の中に災いや病気など故障がなく平穏であること。
 誰もが人間らしく生活し、文化を享受するゆとりの中で暮らし生き、働く権利が守られることはいつの時代にも人々の共通した願いでした。憲法では基本的人権という言葉として明記されていることに改めて感動を覚えます。
 「万民豊楽」…私はこの言葉に憲法の中の、内心の自由、思想信条、表現、結社の自由を連想します。

 日本国憲法こそ、昔から働く人々が育み培ってきたこれらの祭りの精神である「人間らしく生きる」ための願いを反映させたものだと思います。今の日本国憲法の下で、人々が人間らしく生きるために必要な文化の花を精一杯咲かせ、あらゆる生命の尊厳を輝かせる祭りや芸能の精神をこれからも後世に伝えていきたいと思います。


作品紹介 『ぴーひゃらどん』(作・構成・演出 / 金子満里) 0歳〜3歳の親子対象作品(上映時間35分) 本作品の一部分を録音したものです。(1分18秒)

金子満里(かねこ まり)さんのプロフィール

埼玉県上尾市出身。大学在学中の1987年に荒馬座に入座。以来舞台一筋に活動する座歴30年を越すベテラン演技者。舞台では、お囃子の中心として篠笛を担当する機会が多く、篠笛のソロ演奏などの評価も高い。気さくな人柄のにじみ出た軽妙洒脱な司会ぶりも観客を惹きつけています。荒馬座のさまざまな公演作品の作・構成・演出も担当し、荒馬座の創造部門の中心を担う存在でもあります。

当サイトに収載しているアート関連情報(1)(2)   CDブックス『ドレミファ憲法』