法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です
  歌で伝わること、歌で伝えたいこと 2018年7月16日  
  館野公一さん(シンガー・ソングライター)  
 

◆語り歌を歌って

 私は"語り歌"を歌っています。英語ではballadと呼ばれるジャンルです。誰かから聞いた話、新聞で読んだ話、本当にあった話やありそうな話、あったら面白いだろうなという話を歌にして歌っています。日本には講談や落語という語りものの伝統芸がありますが、私の語り歌は歌とか音楽というよりも、そんな語り芸に近いものではないかと考えています。どんな歌かといえば、核燃料工場の労働者が交通事故で死んだ話、養豚場の子豚が急に元気をなくした話、開発されそうになると自らの意思でそれを止める街の話、それから、ボクサーが冤罪で獄に繋がれるボブ・ディランの「ハリケーン」も日本語にして歌っています。毎日の新聞を読んでいると、これからも語り歌で伝えたいことがまだまだたくさんあると私は考えています。

◆表現としての歌と憲法

 歌という表現は、誰かに聞いてもらって初めて成り立つものです。本来は聞きたい人がいて、その前で歌い手が聞いてもらい、表現したいことを受け取ってもらうものです。だから、本来は「あの歌を聞きたい」とか「この歌は聞きたくない」という聞き手の要望に応えるのが歌い手なのかもしれません。私は聞きたい歌があると言われれば喜んで歌いますが、この歌は聞きたくないとか歌わないでほしいと言われたら、その歌を歌わないという選択はしたくありません。その歌が、誰かを差別したり、傷つけるものでない限りは、だれも歌を縛ることはできません。歌は歌われなければならない表現だからです。だから、憲法の中でいちばん身につまされる条文は21条だと感じます。

  ・第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
  2 検閲は、これをしてはならない。(略)

 表現の自由は何があっても守らなければならないし、検閲を許すことはできません。先に発表された自民党の憲法草案では、「公益及び公の秩序を害する目的」と判断されれば、表現の自由も認められないとされています。この一点を持ってしても、憲法の改正を認めることはできません。

 私の語り歌は、10分から20分と少し長めの作品が多いのですが、短めの2曲を聞いていただければと思います。



99年の東海村臨界事故のあと、その場にいた人たちの「声」が聞こえてくるような歌を作りたいと思いました。新聞記事をかたっぱしから集めて、記録本やインタビューなどをたくさん読んで、そしてこの歌ができました。


アルジェリア戦争が始まる1954年、シャンソニエのボリス・ヴィアンが書いた「脱走兵」という歌があります。ピーター・ポール&マリーやジョーン・バエズが歌い、日本でも高石友也、加藤和彦、沢田研二が歌っています。2015年に集団的自衛権を認める安保法制が成立したとき、国会で問われた安倍総理は「徴兵制はありえない」と答弁しました。「果たしてそうだろうか?」と思った私は、経済的徴兵制をこの歌に歌いこんでみました。
館野公一(たての こういち)さんのプロフィール

1954年4月、東京生まれ。高校生の頃、高田渡や加川良、友部正人に影響をうけてギター、マンドリンを弾きはじめ、80年頃から、市民運動の中で自作の唄や替唄を人前で唄うようになりました。97年からは、物語り歌を中心にしたライブ「語り歌の継承」をライブ「語り歌の継承」を谷保のかけこみ亭(東京都国立市の居酒屋)で年に4~5回のペースで続けています。歌っていて一番気持ちのいいステージは「デモで歩く広い道路の真ん中」だと思っています。

当サイトに収載しているアート関連情報(1)(2)   CDブックス『ドレミファ憲法』